佐久間さんと布施さんが出逢ったのは3年前。
市の産業振興課が進めていた『農商工連携セミナー』。その第1回目で、観光資源を掘り起こそうというディスカッションでのこと。東金には古くから「松之郷ぶどう郷」という農業と観光を組み合わせた産業があるという話題になり、たまたま同じテーブルに着いたのが始まりでした。
布施八郎ぶどう園を経営する布施さんはとうがね巨峰づくりの草分けとして、何十年もかけて地道な試行錯誤を繰り返してきました。シーズンになると、ぶどう狩りの行楽客を愉しませようと園内でコンサートを開催するなど、生産活動の傍らで様々な企画も行っています。シドニー五輪のあった2000年には、オーストラリアからアボリジニ(原住民族)の楽器「ディジュリドゥ」の奏者を招いて演奏会を開き、話題となりました。
最近では、新しい品種にも挑戦しています。中でも赤い実の巨峰「安芸クイーン」という品種は育成が難しく、十年以上かけて現在の栽培方法にたどり着きました。全国でも生産農家が少ないのでたいへん珍重されていて、天皇陛下が東金に来訪されたときに献上した御食事にも採用された逸品です。
国道126号沿いで陶芸をやっている民芸みはしの佐久間さん。子どもからシニアまで楽しめる陶芸体験教室を通して、モノづくりの楽しさを伝えています。記念品や贈答にオリジナルの器を依頼されることも多く、佐久間さんは日ごろから地域の特徴を生かした素材を探していました。
冬場になると、布施さんの農場からは剪定したぶどうの枝がトラック1台分も出ます。通常はこれを畑に戻して次の年に備えるらしいのですが、これを少し分けて貰って葡萄釉として活用しようという話になりました。
枝を燃やして灰を作り、濾過・アク抜きを経て乾燥、長石と調合して釉薬が完成します。「ぶどうの枝で作った釉薬は、市販の灰から作った釉薬に比べて艶があり白く乳濁するのが特徴で、独特な味わいが出ました。」と佐久間さん。「ぶどうの栽培にはマグネシウムやマンガンなど、様々なミネラルの配分が欠かせない。これが通常の雑木灰とは違った特徴をもたらすのではないか。」と布施さん。
8月に入ると、園内には1本から40メートルもの枝がひろがる元気なぶどう棚にたわわに実ったぶどうを見ることが出来ます。ぶどう狩りの期間中、布施八郎ぶどう園では東金ぶどうの釉薬で作ったやきもの展示会を開催しています。
布施八郎ぶどう園
東金市松之郷3564‐10 ☎0475-52-5689
民芸みはし
東金市家之子484-9 ☎0475-52-2348
http://www.cam.hi-ho.ne.jp/oshimoto/mihasi_011.htm