かつて東金駅西口界隈にはたくさんの旅館があった。
しかし、それも気がつくとここが最後の1軒になっていた。
それこそ八鶴湖の桜の季節などは賑わったものだ。
日本じゅうが元気だった時代には販路開拓でやってきたどこかの営業さんたちや、 建築現場の出稼ぎの人たち、そしてたまに受験生とか。
旅館の中は、さまざまな目的で当地を訪れる人の声であふれた。
いまの利用者は仕事の人が大半。
平日こそ満室になるが、週末はそうでもない。
「昨日の団体さんはまだ『東金は暖かい』って言っていたけど、最近はみんな立派な家に住んでいるでしょ。だからたまに東北からの人なんかには言われるのよ、窓ガラス1枚じゃ寒いって。」
ちょっと前まで一泊二食付もやっていたけど、いまは素泊まりだけにして、
近くの寿司屋か蕎麦屋から出前でも取るか、外で食べてきて貰う。
かつては11室開放していたけど、いまは8室のみ、ぜんぶ和室。
完全個室もあるが、相部屋を襖で間仕切りするだけの部屋割もある。
鍵はない。
外からの見た目以上に広いので古い建物を維持するのも容易ではない。
「外人さんからの問い合せもあるけど苦手。そんなんじゃいけないんだろうけどねぇ。」
と女将さん。
「合宿とかでもいいけど、あまり話はないね。」
「お酒飲んで帰ってくる人はあまり好きじゃないし、夜遅く開けているのも嫌だから。」
「インターネットとか広告とかいろいろ来るけど、ぜんぶ断っちゃうの。」
どんな質問にもネガティブな話を楽しそうに返してくる。
なんともマイペースで明るい女将さん。
秋葉旅館は駅から30秒、創業してちょうど100年になる。
秋葉旅館
東金市東金588
0475-54-1824